新学会長および新編集委員長のご挨拶

2025/08/01

(PDF版)

新学会長ご挨拶
                         日本トレーニング科学会会長 中村真理子(国立スポーツ科学センター)


 本学会は,創設以来35年以上にわたり,トレーニングに関わる実践と学術の知を融合させ,健康づくりから競技スポーツに至るまで,多様な現場における知見の集積と交流を推進してまいりました.近年では,実験的エビデンスの活用に加え,実践現場で蓄積される経験知との相互作用や統合を重視する方向へと,学術と実践の連携も進展しています.
 本学会が果たすべき役割は,単なる情報の集積にとどまらず,「現場と学術をつなぎ,知の価値を共創する場」としての機能を果たすことにあると考えています.エビデンスに基づく実践(Evidence-Based Practice)の推進においては,実験的研究に加え,実践研究や事例研究の蓄積と共有が不可欠です.本学会は今後も,研究者と実践者をつなぐ対話と共創の場としてその価値をいっそう高めていけるよう努めてまいります.本学会誌が,研究者や現場で活動される皆さまにとって,刺激的で実用性の高い情報源となり,学術と実践をつなぐ架け橋としてお役に立てることを願っております.


新編集委員長ご挨拶
                                  トレーニング科学編集委員長 渡邊航平(中京大学)
 学術研究において古くから“Publish or perish”という格言が広く知られています.“出版か死か”もしくは“出版せよ,さもなくば滅びよ”などと訳されています.研究者にとって学術論文の出版が非常に重要であることを意味するとともに,特に近年では学術論文の出版への過度な偏重を問題視する用途でも用いられています.誤解を恐れず,私なりのモットーをここで述べたいと思います.“Publish or publish”です.私が作った造語ですが,学術論文の出版を必要以上に強調する意図は全くありません.ただし,得られた成果をアウトプットしないという選択肢は排除し,“何らかの形”で出版や公開をすることを意図している点では少し偏った考え方かもしれません.しかし,自身の研究や実践の成果を,共有・伝承していくことは,我々,トレーニングを科学する者や指導する者,にとって積極的に取り組むべきことであるという点は,この雑誌を手に取っている多くの方に共感していただけると思います.近年,様々な出版形態が普及し始めています.その形態によっては,その是非が問われているものの,選択肢が拡がったと考えることもできます.このような状況下では受け手側の素養も必要であり,数多ある情報源から適切な情報を得る能力も求められることは言うまでもありません.当雑誌では,研究論文のみならず,研究ノートや トレーニング・コーチングに関するアイデア,意見,トピックなど,様々な形での投稿を受け付けています.ぜひ,「トレーニング科学」を“Publish or publish”の1つの選択肢として積極的に活用いただければと思います.