会長ご挨拶

日本トレーニング科学会会長

須永美歌子(日本体育大学)


東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会において、「多様性と調和」がビジョンとして掲げられ、世界中の人々が多様性と調和の重要性を改めて認識し、共生社会をはぐくむ契機となりました。そして、いま誰もがスポーツに取り組み、試合に参加し、記録に挑戦できる環境が整えられつつあります。しかしながら、トレーニング科学分野においては、若年男性アスリートを対象とした研究が中心に行われており、女性アスリートやパラアスリートを対象とした研究はまだまだ少ないというのが現状です。これまではあまり着目されてこなかった様々な身体特性をもった対象者に関する知見は、誰もが安全で効率的なトレーニングを行うためにも重要であることから、今後はトレーニング科学研究分野におけるダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みの推進を図りたいと考えています。

スポーツ現場でコーチやトレーナーが感じている「違和感」や「疑問」などに研究者が耳を傾けることによって、現場のニーズに応じた知見が創出されることが期待されます。日本トレーニング科学会は、まさしく立場や分野の隔たりなく議論できる場であるといえます。これからも歴代会長を中心とする諸先輩方のご尽力によって築きあげてこられた“スポーツ現場と研究の融合の場”を大切にしながら、さらなる発展をめざしてまいります。